ウソの国-詩と宗教:st5402jp

キリスト信仰、カルト批判、詩のようなもの、思想・理念、数学・図形、などを書いています。

年寄りです。1954年2月24日、長崎市の生まれ。17か18歳で、佐世保で洗礼を受けたクリスチャン。現在、教会へ行っていない逸れクリスチャン。ブログのテーマは、キリスト信仰と、カルト批判が中心です。ヤフーブログから移行してきました。ブログは、2010年からなので、古い記事も多いです。


  夜から朝へ        戸田聡
 
明かりを消した途端
思い切り闇を吸ってしまった
闇の粒子が体内に満ち
肉体の粒子が夜の部屋に散った
そして限りなく夜へ拡散するかに思えた
しかしよく見ればやがてぼんやりと
窓が天井が
すでに散っていったものたちが皆
瞬くように不安げに見詰め合って
底が深くなるばかりの夜よ
浮遊だけは懸命に否みながら
 
カーテンの向こうから薄明かりが
瞬きもせずに囲んでくる
闇の粒子は漂いながら
後ろ姿を幾重にも引いてゆく
残された肉体の粒子は
少しずつ光の重さに沈みながら
うごめく短く長くやがて息が
生まれたばかりに迎える朝よ
流体だけは頑なに拒みながら
 
(1999年01月02日、HPにアップ)
 
 
  罪の足跡        戸田聡
 
まっすぐ歩いたつもりが
振り返れば随分と曲がっている
右に左に
無駄な道のり
それら徒労
受け容れるしかないものたち
無数の足跡に紛れたり
別の足跡と交叉して離れたり
途切れているところもある
一度は死んだのかも知れぬ
いずれ満ち潮が
すべてを攫(さら)って消してゆく
足跡一つ残せませんでした
と泣きながら倒れるようにひれ伏して
許しを乞わねばならないだろうか
後ろがどうであれ
後でどれだけ消えてしまおうと
今ここで決めねばならぬことがある
目の前で一歩踏み出せば
足跡は一つ増える
踏み出すことは
踏みしめること
踏みつけること
踏み拉(ひし)ぐこと
何かを
 
(1999年01月04日、HPにアップ)
 
 
  前進か後退       戸田聡
 
前には足跡がある
後ろには足跡がない
戻ることはあり得ない
止まることも許されない
嫌だ嫌だの挙げ句の果て
後ろを向いて後退(あとずさ)り
だから転んでは気を失い
目覚めればいつも仰天している
 
(1999年01月05日、HPにアップ)
 


  穴と窓       戸田聡
 
上から下まで穴だらけ
だが吸い込める穴は三つしかない
でも取り込める窓は無数にある
しかし滅多に窓は開かれない
それでも稀(まれ)に出入りする風
上から下まで穴だらけ
しかして風の方に体液は乗る
 
(1998年12月22日、HPにアップ)
 
 
  蛍光灯と車      戸田聡
 
蛍光灯は明るいけれど
部屋で聞く外を走る車の音が
何度聞いても苦しい吐息のように
聞こえてならないことがある
まるで瀕死の病人が苦痛の底から
最後に訴える叫びのように
蛍光灯の青白い光は
部屋を明るくするが狭くもする
だだっ広い夜の片隅に取り残された
ちっぽけな明暗
また車の吐息が過ぎてゆく
すでに布団の中にいて
何故か顔をしかめる
 
(1998年12月23日、HPにアップ)
 
 
  中心と周辺        戸田聡
 
物の形がはっきり分かるのは
視野の中心の狭い範囲だけ
視野の周辺は記憶で見当をつけている
ときに夜はっと驚くのは
視野の周辺に入ってきた微(かす)かな光
視野の中心と手は照明のスイッチを探す
中心部に映る光の鈍さと
周辺部に映る形の不確かさ
あるとき中心にいて
当然のように聞き流され
あるとき周辺にいて
いるはずのない不審人物になってしまう
 
(1998年12月23日、HPにアップ)
 
 
  一年草         戸田聡
 
芽吹いて
伸びて
咲いて
枯れる
毎年同じ
でも繰り返しはあり得ない
見分けがつかないとすれば
いつどこで芽吹いても
こうしなければ間に合わない
という最短距離を生きているから
 
(1998年12月29日、HPにアップ)
 
 
  あるとき        戸田聡
 
ひとつとは限らない
連続しているとも限らない
多くは過去
あるいは架空
の引き出しに収められ
いつ
の中で最も特定できないものを
特定するかのように指している
あるいは未来
あるとき
何か気付くことが
あるかもしれないとき
 
(1998年12月29日、HPにアップ)
 


  悪魔の臨終
 
軽い手帳はめくられた
涙のように
パラパラと
安い花は乾いて散った
時計を手にした信仰が
秒針のように優しくうなずいて
病者を見つめ
死者を送るとき
哀れみという哀れみが
牢獄のように彼を囲んだとき
そこにいる誰もが知らないところで
とてつもなく激しい嘔吐が起こり
病者は墓穴を求め
はじけた煙のように消え失せた
かわりに年老いた天使が目覚めて言う
「あなたがたが安い施しをしたので
あなたがたが天国を約束されているなら
地獄へ落ちたいと彼は望んだ」
 
 
  感動
 
山の頂に立って
そこから空を飛べとは言わないし
山を移せとも言わないが
もう少し感動させてくれないか
目頭を焼いて楽園を追われ
いや捨てて日没へ去れと言うのか
選民を押し潰した被愛の傀儡よ
伝わらないことを誰のせいにする
読み方が悪い
書き方が悪いはよしてくれ
賛美も聞き飽きた 十字架を
重い荷物にたとえる愚は
異言を放つ教祖様方
溢れるほどのブドウ酒
産みの苦しみに快感を束ね
満腹の上に飽食を重ね
発酵しすぎた唇が
開く赤い闇が
パンのみにて生きるものにあらずと
ずいぶん酢を噛んでいる
異臭の迷路から
生まれた詩の永遠が
死の永遠へ昇天する刹那
信仰は迷いさまよい漂いただ酔いながら
久しぶりに口ずさむ
古い讃美歌に泣いて
復古、復古と愛人を呼ぶ
素直すぎる狂気の沙汰だ
 
 
  敬虔な
 
ケーケンなクリスチャンが
祈りをささげる場所になじめず
憐れみの眼差しに胸がいっぱいで
胸くそもいっぱいで
悟らない下等動物は
居場所を求めて
いい場所を求めて
あとずさりを始めた
ここでもない
そこでもない
気がついてみると後ろは崖で
もうあとずさりはできない
まわりには誰もいなかった
あざける者もいなかった
風がヒューヒュー吹いていなかった
教会はどこにあるのか
十字架はどこにあるのか
悟らない下等動物は
陰険なクリスチャンになって
祈りをささげた
ああこんなにも人畜無害であるのに
 
 
  真実
 
宗教人のあわれみは
ときどき気色が悪かったりするので
やめておいたつもりの男が
自分を憐れんだり憎んだりするので
きっと地球は丸いのだなと
あくびをして考えてみるに
 
子供を戦場に送って死なせたり
科学者を殺したりした中世の教会を経て
まだ教会というのがあるのは
昔のことを悪者にして
あれらは間違っていて
あれらは悪かったと
言えるおかげさまだったりしている
 
地球が太陽のまわりを回っていることは
今は誰でも知っているけれど
相変らず日が昇ると言い日が沈むと言っている
感覚というものから
科学はどんどん遠くなっていく
 
宗教人の求める真実が
遠くなりませんように
軽々しく人を憐れんだり
憎んだりするときに
お前が間違っていて
お前が悪いと言ってもらえる
お叱りと憐れみがそばにいて下さいますように
 
面倒は嫌いなので
青信号を
緑信号と呼ばなくてすみますように
急に地平線や水平線がまるくなったり
地球が昇ったり沈んだりしませんように
 


  聖なるあした
 
明くる日は
あした
また来る朝も
あした
未知なる希望
消え入るごとく
ささやかに
 
聖なるもの
聖なるものよ
その道に至るまでに
怒りのパン種を懐に隠した
旅人が幾度つまずいたのですか
鶏が鳴く前に
何度
泣かなければならないのでしょうか
 
 
 ユダ
 
私はここにみる
誰よりも激しく主を裏切り
そして誰よりも激しく悔いて
悔いて改めるすべを持たず
主の復活を知らないまま
許されることを求めようもなく
自らを許さず
主に関わった様々な人々の中で
ただ一人自ら命を絶った男を
 
私はここに想う
主をユダヤの救い主と望んだがゆえに
イザヤに示された
茨の道を歩もうとされた主を
誰よりもよく知り、
激しく愛したがゆえに
誰よりも激しく憎んだ男を
 
 
  悪魔
 
悪魔とは何か。
それは今、私の中に満ちているものである。
と考えてみる必要があろう。
他人について魔女狩りをする前に、
自らの中に潜んでいる悪魔狩りをしてみるべきである。
それが到底できないことに気づくであろう。
私はさびしく語るほかはない。
他人を見る心において
私はしばしば悪と親しく、
絶望のふちにおいて
私は魔と友人である。
私は人をむさぼり
自らをむさぼり
むしばまれてゆくだけなのか。
父なる神はどこにおられるのか、
わが救い主はどこにおられるのか。
皿に盛られた料理を汚く残したまま
私はかつて笑いの中で主の盃に加わり、
今は嘆きの中で顔をそむける。
そむけた顔の後ろに、忘れようとして
忘れることのできない言葉のまなざしに
主よ、あなたの御名によって・・・
私という名の悪魔が
父の手によって裁かれますように。
私はさびしくつぶやき
不遜の祈りを語り続けるだろう。
 
 
  自殺した少女
 
やわらかい羽毛の
あたたかいベッドの上で
少女は目を覚ました
そばに白い衣を身にまとった
白髪の老人が
穏やかな表情で立っていた
「ここはどこですか
天国なのですか」と
少女がたずねる前に
大きなディスプレイの画面に
映し出された光景は
家族の狂ったように泣き叫ぶ様子
恋人が悲しみのあまり酒を飲み
暴走している姿
そして自らの惨たらしい死体
些細な誤解が生んだ
少女の自殺がもたらす数々の悲劇・・・!
誰にも秘密にしていた見苦しい思い出
画面は延々と続く
少女は泣き出して言った
「お願いです
どうか私を地獄へ落として下さい!」
老人は哀しげな目で答えた
「娘よ
気の毒だが
ここが地獄なのだ」
 


  聴診器の幻想
 
悔いながら懐かしみ
死にそうで生きていけそうで
ここまでは大した心臓で
逆流の雑音を奏でる聴診器
は既に昔の熱(ほとぼり)のように
胸を叩く幻想を傍らに
後ろ向きの赤子と
笑う喀痰の老人を同時に記帳して
費え去る収支のページをめくり
破れた扇子を広げ
無知なる未知に語り続ける
初めて字を書いたときの
初めて言葉を失ったときの
初めて忘れたと言ったときの
肉体と精神の継続が
幻想でも現実でもなくなるまで
内緒話の途切れ間を
管のカルテに送り続ける
 
(1998年11月4日、HPにアップ)
 
 
  風の笛         戸田聡
 
ほとんど風のない日だった
ふと一吹きの風の中に
笛の音(ね)を聞いたような気がした
突き当たりの角をいつ曲がってきたのか
風に押されて来たかのように
一人のまだ幼い男の子が立っていた
幼年時の私の顔には似ていない
涼しげな顔が少し蒼ざめて
突き当たりに向かって歩いていく私の
手を軽く握って
親子でもないのに手をつないで
曲がり角に差し掛かった
ふと一吹きの風
笛の音を聞いたような気がした
手の中の小さな手も
その子もいなかった
私は風とは逆の方へ歩き出していた
もう戻れないと思った
笛を吹いたのは君だね
踊らなかったのは私だ
 
(1998年11月4日、HPにアップ)
 
 
  虹色         戸田聡
 
貝殻の内に眠っていた
シャボンに乗って遊んでいた
オイル溜まりに淀んでいた
油膜の表で歪(ゆが)んでいた
テレビの画面にチラついていた
眼の内外で視線を鈍らせた

お空の虹
渡らせてくれと泣いてみるか
 
(1998年12月14日、HPにアップ)
 
 
  無表情        戸田聡
 
筋肉という筋肉が
弛緩してしまったのか
硬直してしまったのか
何も語らず
動かない顔は
架空のように
時間と向き合いながら
刻々の侵入も喪失も
隠してしまった
顔の裏側の曲面に
だからきっと血みどろだ
 
(1998年12月14日、HPにアップ)
 

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