ウソの国-詩と宗教:st5402jp

キリスト信仰、カルト批判、詩のようなもの、思想・理念、数学・図形、などを書いています。

年寄りです。1954年2月24日、長崎市の生まれ。17か18歳で、佐世保で洗礼を受けたクリスチャン。現在、教会へ行っていない逸れクリスチャン。ブログのテーマは、キリスト信仰と、カルト批判が中心です。ヤフーブログから移行してきました。ブログは、2010年からなので、古い記事も多いです。


  アドリブの道
 
軽妙なアドリブだね
道は星の数ほどはないのだよ
狭い道をうろうろしたあげく
同じ道に出てしまった
近道をしたつもりが
また同じ道に出て
しかもさっき通った所だ
つまりは後退している
近道はやめた
軽妙なアドリブだね
車は星の数ほどはないのだが
ひどい渋滞だ
ちょいと車を中央に寄せて
先の方を見ても
先へ行けるわけではないのだよ
アドリブの道だ
今日中には着くだろう
などとのんびり発想しては行けない
喜んで受け容れなさい
今年中には着くでしょう
生きて辿(たど)り着けたらそれこそ幸い
も災いも道は星の数だ
 
(1999年08月17日)
 
 
  信号待ち
 
アイドリングさせて
交差点で信号が青になるのを
待っているたくさんの人々
表情をアイドリングさせて
中には空吹かしの顔で苛(いら)ついている人や
あわてた様子でアクセルを踏みたくて
スロットルを開けたくて
手や足を盛んに揺すっている人もいるが
青だ
それ!とばかり走り出す人
急発進して転びそうな人
急ぎ足でシフトアップして加速する人
ゆっくりクラッチをつないで
アイドリングのまま動き出す人
その中で一人だけ
アイドリングのままうっかり
ひょいとクラッチをつないでしまったのか
止まっている
少し目が空(うつ)ろだ
誰かセルを回してやってくれ
押してやってくれ
キックしてやれ
蹴飛ばしてやれ
でも急いで飛び出した人は
もう向こうに渡ってしまって
二度と戻っては来ない
アイドリングの表情では
回すことも押すことも蹴ることもできない
 
(1999年08月17日)
 

 
何を投稿したかも、だんだん忘れてゆく・・・(悲)
 

  空しさの整形
 
「取り分として楽しめ」
「逆境のときには考えよ」
「生まれてこなかったほうが
 ・・・よかったであろう」
取り分と試練と定めを区別できないよ
キリストの教えを守れと言われれば
守れない自分に直面するだけだ
あるがままでよいと言われれば
自分を受け入れる自分に
嫌気が差してうんざりするだけだ
キリストにあって許された者として
過去や未来や他者に囚われずに
今を懸命に生きること・・・しかし
夜眠れないとき悶々としているのは
昼虚ろに取りとめもなく物思うのは
今を懸命に生きていると言えるのか
最も空しくなるとき
残っているのは自らの未熟な
祈りの言葉だけ
 
それは最も・・・ではない
いずれ自らの言葉も消え失せ
最後に最も空しくなる時
空しさは光になる
 
その時を待ちわびて
未熟な自分を許せない未熟な自分を
耐え忍ぶ一条の
一途な光を
本当の空しさを
 
 
  ヨブ記と沈黙
 
ヨブは、たとえ叱られても、
神様が直接声を掛けてくださるのを
待っていたのではないか。
 
待って、待って、
待ち侘びていたのではないか。
神様の沈黙の試みに耐えられなくて
ついに神様に悪態をついて
友の説得にも納得できず自己正当化し
神様の無慈悲を嘆くという罪を犯した。
 
叱られても、叱られても、
試練と分かれば耐えられるだろう。
最後に
神様はヨブに声をかけて下さり
神様はヨブを叱り戒めたのち
ヨブの祈りを受け入れて
罪を赦して下さった。
 
現代では、少なくとも私には、
神様は直接声をかけて下さらない。
主イエスも声をかけては下さらない。
今は聖書から学ぶしかないのだろう。
導きと思えることがあるとしても、
思うに任せぬ現実にあって、
ときに沈黙に耐えられず
信仰と不信仰のあいだで揺らいで、
それでも赦される信仰を
信じている・・・?
 


「下手な詩だ」と言われて返す言葉はないのだが、
昔書いたものを読み返していると
何故こんなことを書いたかな?と自分でも分からないことがある。
 
 
  季節の約束
 
針に置ける軌跡を知らないかな
脈管のさまよえる路地で待ってる
そこから先はとんがっていれば大丈夫だ
ケラケラ笑うかけらばかり
握って角度がゆっくり南に傾いて
光る曲線がいちばん長くなる所だ
行き止まりなんてあるものか刺さなくていい
血は嫌いだ綺麗な喪主を
街の眼で汚したくない
もう寒くないだろう標的の入り口付近
宝石を数珠(じゅず)に巻かないように
切り貼りして過ごせばいい
飽きたら呼び鈴を忍ばせて
カジュアルでいいから日暮れを待ちなさい
思い込みは駄目だよ紅茶色だ、いいね
たぶん木馬が飛ぶ頃になると思うよ
ただ屋根のないタクシーが
黒い額で潰しに来るから気をつけて
そろそろ芽も味方してくれる
鋭角に切り落としたら一休みして
グラスに注げる口癖もあるさ
好きな水晶玉でも探して
菜の花の夜を見つけよう
帰りは直線で別れる前に
ちらっと月夜を弾いておくれ
じゃ葬列に出会ったらよろしくね
切るよ
 
(1997年2月28日)
 
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自由連想だ。そのときは何か関係を
感じた言葉たちだったのかもしれない。
世界に、あるいは詩に、斜(はす)に構えていたか
・・・今読んで、少し楽しいのだが、
やはり遊びが過ぎたような気もする。
 
 
  紙のボトル
 
紙の箱入りジュース
よく漏れないものだな
中味は飲み干して
腸の細菌を乱しているか
濾過されて膀胱に向かっている
底に残った汁は乾いたか
爪で引っ掻くこともできない
黴(かび)でも生えているのか
のぞき込む気にもならない
さっきから
ほお と口を開けて
こちらを向いている
口を開けて見返してやった
にらめっこはお前の勝ちだ
お前は長いこと
私が後ろを向いたあともそうしている
やがて潰され
焼かれる運命も知らない
運命?
お前が焼かれるとき
私が何をしているか生きているか
私だって知らないさ
 
(1997年2月28日)
 
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縦長の1リットル入りの紙パックだが、
まだゴミの分別リサイクルは意識していなかったが、
それは省略してもいいだろう・・・?
何故「私が焼かれるとき」を書かなかったか
のほうが気にかかる。私が先ということもありうる。
というわけで・・・
 
ん?、私が先だって?
でも私が焼かれるとき
お前がまだそこにいるか先に焼かれているか
私は知りようもないさ
 
を加えてみる。腑に落ちない・・・何か足らない・・・
最初から?モチーフから?何か・・・駄目だ、こりゃ・・・
ということで、今は
修復不能なエラーということにしておこう。
 
 


  冬の終わり
 
吹雪の向こうに
耐えるように 朧(おぼろ)げに
眼差しを向けてくる
少女のような顔
幼くて泣きそうなのか 唇は
かすかに微笑んでいるようにも見えて
初恋の人でもなく
知っている人でもないのに
去りがたく 目を
そらすことができない
いつの想いに
吹かれて 顔
動かないのに確かに
遠ざかる方向を
こちらへ向けている
ここでは吹雪なんて滅多に
吹かないんだよ なのに
どこへ 君は
誰のために
雪に
風に
忍ぶ 面差(おもざ)し
思わず伸ばそうとした手の先に
最後のように寒気(かんき)
触れて 巻いて 不意に
鳥だろうか ふと
横切って いつの影も
裏切って ここでは
吹雪はないんだ
 
(1997年2月26日)
 
 
  春へ
 
娘たちが真似のできない声を飛ばしている
鳥がいくつかの季節を鳴いている

写楽が筆を銜(くわ)えて
忘れかけた君の頤(おとがい)を狙っている
 
(1997年3月6日)
 
 
  遠い約束
 
あれは遠い約束
君は待っていたのかもしれない
きれいな人
ひょっとしたら辛かっただろうか
少しは痩せたりもしただろうか
まだ先生と呼ばれていた頃
花嫁募集と冷やかされていた頃だった
癒すために歩く道を
病人を乗せた自転車が
いつか追い越していくこと
恐れていたのかもしれない
折れたハンドル
潰れたタイヤの転倒に
どうしても君を
巻き添えにする気には
なれなかった
許せないなら許さなくていい
春の移り気な光を浴びて
忘れてくれたらと願っている
君が乗り越えるための低い壁
あるいは踏台
君は明日に向かって跳んだと信じている
きれいな人
あの日を償えるものなど何もないけれど
眠れない夜
素直に喜べない四季の移りに
うずくまっている座布団の顔
病み綴る日々の今
それがあの日に返す答だ
 
(1997年3月7日)
 
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本気になれないでいるのに、そう言えずに、
「次はこちらから連絡しますから」と、
その場しのぎに、笑顔で白々しい嘘を吐いたことがある。
 
 
 


  老醜へ向かう床下
 
数年以上前に
湿気と白蟻(シロアリ)防止のために
床下換気扇を付けてもらった業者の人
無料点検だという
無料点検というのは
無料であるはずはなく
新製品の売り込み
であることは見え見えなのだが
床下換気扇を付けてから
畳に黴(カビ)が生えなくなったり
少しは涼しくなったような気もして
そのことは言わないにしても
むげに断ることも出来ず
家に入れてしまった
床下に潜って数分
出てくるとさっそく説明を始めた
新式の換気扇の追加と
乾燥剤を敷いて約二十万円
「近々引っ越しますから」
と言えば一円も払わずに済むが
それは白々しい嘘だし
また近々やって来るだろう
「いろいろ事情があって・・・」
「先の目処が立たない・・・」
「せっぱ詰まった状況で・・・」
等々あながち嘘ではないことを並べた
すると二十万が十万になり
「これだけはしておかないと・・・」
と後へは引かない構えで勧めたが
こちらが今にも死にそうな表情で
言い続けているうちにホントに気分も
暗くなってきたのを察知したのか
業者の人は少しく慌てだした様子で
結局せめて乾燥剤二袋だけでも
と一万六千円ということになり
これ以上は角が立ちそうなので
それで手を打つことにした
袋を持ってまた床下に入り
出てくるとさすがに商売人
「もう一袋だけどうです」と
なかなかしぶとい
「いいです」と首を振り
少し苦しい苦笑い
それはもちろん
もうやめてくれ
いい加減にしてくれ
ということを意味していて
作業は終わった
最小限の仕事だが
最小限の儲けは与えたつもり
門前払いよりは業者としての
面目も施してあげたつもりだが
領収書を書きながら彼は
死にやがれという皮肉か
あまりに悲壮感漂う訴えに
ついうっかりか口を滑らせた
「あんまり言って
自殺でもされたらたまらんから
あ、すいません、言い方・・・」
「いえいえ」(ほーほー)
と聞いていた
後始末を終えて彼が帰ったあと
二十万を一万六千円にした安堵感と
きっぱり断れなかった気の弱さと
もし長生きしたら
家が白蟻でボロボロになる不安を
反芻(はんすう)しながら
この家を食い尽くす白蟻は自分なのだ
と結論して横になった
 
(1999年04月30日)
 
 
 

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