十分な一度
一生に一度
わけも分からず選ばれて生まれ
一生に一度
わけも分からず召されて死ぬ
というより
生まれてから死ぬまでの
すべては一生に一度だ
一生に一度ほど
わけの分からないものはない
とどまることを許さないものに
始まりから押されてゆき
終わりへと引かれてゆく
その前もその後も知らない
知ると言えば信仰の話になるが
信仰と言えば
信仰は生前よりも死後よりも
生きている間こそ意味を持ち
生ける命と切り離せないものだ
だから生まれる前も死んだ後も
人には隠されていて知る由もないが
すべては知られていると
言えるだけの信仰があれば
生まれてから死ぬまでの
すべての一生に一度は
すでに知られている
だから人が知り
生きるのに十分なだけの
一生に一度は常に与えられているが
与えられたほんの一部にさえ
気づくことは試練である