何か訳も分からず投稿している感じだな・・・
烏兎怱怱 戸田聡
月が兎(ウサギ)だったころ
兎は満ち欠けと星を連れてきた
太陽が烏(カラス)だったころ
烏は金色の熱と霜を連れてきた
烏兎怱怱(うとそうそう)
兎は逃げて切り株に転び
逃げ回って草を食(は)むことに長じた
烏は人里を飛んで黒い雲に染まり下りて
啄(ついば)んで嘴(くちばし)を曲げた
日が昇ると人里に幾つもの縮んだ瞳が瞬き
月が昇ると森に光る瞳が開くのだが
霜から泥濘(ぬかるみ)に落ちた
かつての縁(えにし)を
星はもう映さなかった
(1998年10月14日、HPにアップ)
あの頃僕は 戸田聡
あの頃僕は滅茶苦茶頭がよくて
だから今は頭がメチャクチャだ
あの頃僕は無茶苦茶努力家で
だから今はムチャクチャ浪費家だ
今更借りを返すことになろうとは
あの頃僕は我利我利に覚えることに貪欲で
だから今はガリガリに記憶が痩(や)せる
(1998年10月20日、HPにアップ)
無償 戸田聡
祝福もなく夜に生まれ
墓石もなく野辺に朽ちよ
燃える血を竦(すく)み凍らせ
今は亡き人の影を踏め
臨終の霧を呼吸し
濁りの水泡を食らっては吐き
泡吹く毒の晩餐(ばんさん)を
肝胆に秘めて漏らさず
ただ自らの牙を脆く腐らせ
折ってゆけ最早
立てず座せず臥したまま
やがて唯一の薄い揮発の間として
体内を巡る全ての血が
しずかに止まる音を聞くだろう
(1998年12月1日、HPにアップ)
傷の季節 戸田聡
ここは温(ぬる)く舐(な)められた
季節の淡い彩色として
すでに息は暗い
夕暮れの明かりの絶えた
暗夜の森の紅葉よ
彩(いろど)られた傷を
ここは再び舐め始める
深く深く沈黙のうちに癒そうとして
朝の器に盛られる前に
(1998年10月20日、HPにアップ)
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