無能の面        戸田聡
 
計算される数式の値として作表される
片隅の一つのセルのように
あまりにも危うく日々に過ぎて
収まっては壊されやすい
脆い仮面であるのかもしれない
歩みを止め足を踏む木彫りの面
古びた皺と凹凸は罅(ひび)と剥離を伴い
熱を押し殺し秘めた息を舞う
計算も予測も不能な傷の
責め際に割れかけて
なお私を離れぬ面
紐で括るか
内側で噛みつくか
 
(1998年5月12日、HPにアップ)
 
 
  予定と未定へ      戸田聡
 
雑音で目が覚める
睡魔の中までテレビが入り込んでいた
内容は覚えていないのに
見るつもりもないテレビショッピングの
喋りまくる宣伝の声
少し息が弾む
テレビを消してまた横になる
耳鳴りと時折遠くで車の音
汗ばんだ体が冷えてゆく
なぜか胸の中だけ急ぐような動悸
霧深い森の中ひっそりと
このようなものであろうか・・・
いやいや今日は廃品回収の日
我に返る
アルミ缶と新聞紙だったな
やって来るのは子供会だったか
業者だったか聞いていない
何か聞いた
何か見たような
リエントリーどこか
いつかリサイクル
再び我に返る
?返ったのか彷徨っているのか
まもなく新聞配達のバイクの音
鳥が鳴き始めた
 
(1998年5月17日、HPにアップ)