接点          戸田聡
 
無限の一部でしかない有限
無限に成り得ない有限その
無限と有限が等号によって結ばれている
0・九九九・・・=一
限りなく一に近いけれども
決して一には成らないのではないか
でも一を三(あるいは九)で割って
再び三(あるいは九)を掛ければよい
納得せざるを得ない
数少ない無限と有限の接点のようで
しかし曲線は
限りなく短い直線の無限の連なりだし
また或る時間
長かろうと短かろうと
たとえば余命や
次から次に現在となった途端
過去となってゆく限りなく近い未来でさえ
限りなく短い時間の無限の連なりだ
いたるところにある無限と有限の接点
一×(一/∞)×∞
どちらへ転ぶか
外へ出て眺めれば改めて
あらゆるものが無限と接している
 
(1998年7月25日、HPにアップ)
 
 
  置き去りにした課題        戸田聡
 
算数で割り算を習った
小数まで計算を進めると
しばしば無限循環小数になる
切りがないとやめる
一つ置き忘れていた
逆に無限循環小数を分数に直す方法と証明
循環する数を1組だけ
整数として取り出して分子に置き
分母には同じ数だけ9を並べればよい
数学で証明できる
算数で何桁でも自然数が3あるいは9で
割り切れるかどうか調べるには
各桁の数を足した数が3あるいは9で
割り切れるかどうかを調べればよい
という便利な方法を教えられた
また一つ置き忘れていた
何故そうなるのか
数学で十進法を十のn乗を使って表す
十のn乗から1を引けば9が並ぶ数になる
9が並ぶ数は3でも9でも割り切れる
9と+1の部分に分ければ証明できる
数学で証明できる
置き去りにした課題がいっぱいある
切りがないとやめてしまったこと
教えられたまま当たり前のように
思い込み覚えていたり信じていること
長じて大方その価値を問い直すのだが
やさしさで傷つけたり
思いやりで怒りを買ったり
置き去りにした課題は一生を費やしても
解決できないほどいっぱいあって
それがどんな課題であるかも教えないまま
気付かれるのを待っている
算数を数学で証明する
ほど簡単ではないぞ
とでも言いたげに
 
(1998年10月14日、HPにアップ)
 
 
  なくてもいい時間        戸田聡
 
なくてもいい時間を過ごしている
約三億匹の精子の中から
ただ一匹だけが卵子と結ばれ
私が生まれたのに
なくてもいい時間を過ごしている
何となく残され死んだ
約三億(マイナス一匹)匹の精子から
恨めしそうに睨まれているような・・・
素っ気無く答えてみる
何なら譲ってあげてもよかったんだよ
でも私に生(な)る卵子も精子も
そのとき意識も意志も無かったのだから
しようがないじゃないか
私がいてもいなくても世界は変わらない
などという大袈裟な話を持ち出さなくても
(もちろん変わらないさ)
なくてもいい時間を過ごしている
誰も自分の必要性を
理解して生まれてきたわけじゃない
生まれた覚えはない
だがそれは生まれたときのことだ
もう大人だ必要も必然も
理解していていいはずだ
なくてもいい時間
お返ししますと言って返せるものでもない
これからもやって来るに違いない
しかしでは私にとって
なくてはならない時間とは
なくてはならなかった時間とは
なくてはならないであろう時間とは
精子から世界まで
なくてはならない時間とは
なくてもいい時間とは
また考えあぐねて過ごしている
なくてもいい時間
あってはいけないか
 
(1998年10月14日、HPにアップ)
 
 
  頂点を極める者       戸田聡
 
山頂は常に其処(そこ)から
上には登れないことを示しているのだが
登りつめた者は
まるで空までも征服したかのように
誇らしげに四方を見渡している
高い高い大気と吹き上げてくる風は
なかなか下りようとしない者たちの
有頂天の背後から少しずつ
密(ひそ)やかに帰り道を隠してゆく
 
(1998年10月22日、HPにアップ)