眠りの音信
 
別れて久しく
音信も途絶えた人が
見知らぬ地にて永眠するとき
揮発のアンダーグラウンドに
泡沫(うたかた)の
嘗(かつ)ての縁(えにし)
は胸に巣くう鬼畜を眠らせ
血腥(ちなまぐさ)い流れを冷水に
冷水を雫(しずく)に
そして雫が形を失うとき
二つの問いを残すのです
「俺はそんなに悪かったか」
「水さえも永遠ではない」
契(ちぎ)りもなくて罪に濡れ
柵(しがらみ)を越えるよりも先に
冷たく遠く離れ去って
眠り続ける土塊(つちくれ)深く
失われゆく形骸は
永遠の水を求めて
地上からの吸引に逆らうでしょうか
 
(1999年06月29日)
 
 
  飛んでけ
 
喧嘩の最中
強い方に頷(うなづ)きました
自分が嫌になりました
人に頼み事
愛想笑い
相手も笑いかけて
すぐに真顔
友人を作れなかった瞬間です
自分が嫌になりました
喧嘩には近寄らず
人々から離れて
滅多に笑うこともない
明け暮れ

でもなくて
ひゃんひゃん
と張り裂けそうな
笑い声か泣き声か
外へ出したら
おしまいです
鳥肌
外へ出たら
はじまりです
裸で風切って飛んでけ
 
(1999年06月11日)
 
 
  ホーム・レス
 
ホームレスの男が一人
夜の闇が上にあるような
眠らない街を探す
眠るために
今日一日何をしてきたのか
(何もしない日など無いのだ)
罪は許されないのだろうか
と半(なか)ば諦(あきら)めて
ホームレスの男が一人
眠らない街を彷徨(さまよ)い
やがて横たわる
再び目覚める保証はないが
夜の闇は
そっとカウンターを0(ゼロ)に戻す
 
家に閉じこもる男が一人
明かりを点(つ)けたまま
夜に包まれた部屋の中を徘徊する
何もしない日など無い
罪は許されないのだろうか
と諦めきれずに
目覚めの期待を
狭い懐(ふところ)に隠して
やがて眠るために
家に閉じこもる男が一人
明かりを消す
逃(のが)れようがない
いつか闇がカウンターを
そっくり消し去ることから
 
(1999年07月13日)