ロングドライブ
 
夜明け前に出発した
山間の国道
深夜は殆ど渋滞がない
稼ぎ時とばかり次から次へと
大型トラックが走る
ハイビームは使えない
後ろの車に押されるように
ロービームの届かない
数十メートル先の
闇に向かって突っ込んでゆく
同時に対向車線の
ランプだらけのトラックに
目を眩(くら)ませながら
光の中を突っ込んでゆく
前方の流れに追いつくと
前を走る車の背部下端に
ヘッドライトが届く程度に
車間を保つ
あやふやな記憶のロードマップで
しばらくはカーブの多い道
それから峠を越えて
下りのカーブが続く…
 
所々に置いてある自動販売機
ひっそりと道に向けた
青白い光の領域を
しばしば打ち消されながら
道に向かって立っている
この辺り この時刻
不思議というほどではないが
人影が立ってコインを入れる姿を
まだ一度も見たことがない
何度も通り過ぎた道沿いに
水分・ミネラル・ビタミン・糖分
など栄養の端くれを
懐(ふところ)に抱えて
立っているだけだ
待っているだけだ
用済みになって
トラックの荷台に載せられるまで
 
車からの見えにくい
昼とは全く違う夜の
景色とも言えないような
流れゆく様(さま)とはいえ
いつのまにか下りのカーブに
緊張してハンドルを切っている
それほど高い山ではないが
いつ峠を越えたのか…?!
 
危うい視野と
弱々しい領域を誰かに向けて
糧(かて)の端くれでも懐に抱えて
打ち消されて なお
信じて待っている
だけの在り様(よう)で
生きたことがあっただろうか
 
峠…峠は…と思い返しているうちに
夜が明け始めた
枯れ木のルフラン
見覚えのある街並み
ちらほらと朝の人影
まだ先は長い ロングドライブ
路面上で褪(あ)せて
無力になったヘッドライトを
ポジションランプに切り替える
朝のラッシュの峠に向かって
 
(2004年01月22日)