自己嫌悪・一
 
死ぬのだった
そして死ぬのだった
だから死ぬのだった
しかし死ぬのだった
順接
逆接
死ぬのだった
死に続けるのだった
風のように絶え間なく
消えながら去り続けるのだった
それが来ることであり渡ることだった
 
(2000年11月18日)
 
 
  自己嫌悪・二
 
自分らしく生きるのではなく
自然に生きるのでもなく
自然になれ
例えば水になれ
勾配に任せて自在に形を変えて
流れるだけの水になれ
濁りもバイ菌も扱おうとするな
例えば枯れ草になれ
山の上でサワサワ戦(そよ)いでいろ
荒れた庭でじっとしていろ
来年の種も発芽も守ろうとするな
自然でなくてもいい
生物でも無生物でもいい
有機物でも無機物でもいい
例えば聖書か詩集の一頁になれ
そこに染み込んでいるインクになれ
汚れも破れも繕おうとするな
紙切れになれ石ころになれ土くれになれ
人になるな
腐肉が痙攣するような乱れた妄念の内側から
今は人になるな
 
(2000年11月18日)