失せた心
 
いつしか春を楽しむ心も失せて
失せた心が芳春を舞っている
いつしか花を愛でる心も失せて
失せた心が落花を浴びている
いつしか新芽を喜ぶ心も失せて
失せた心が新芽を噛んでいる
いつしか己を慈しむ心も失せて
失せた心が短い弦を震わせる
過ぎ去った春の巻き尺は切れ
また来る春までの時計は狂い
無数の季節の余事に絡まれ
乏しい接線を切れ切れに解いて
かじかむ手から汗ばむ手へと
見渡す春に渡されてゆく
 
(1999年03月30日)
 
 
  陽気
 
突然言うんだ
生活者なんかじゃない
変態のガリガリ亡者だ
そうじゃない
まともな生活はしてないが
そうじゃない
すると車の中にいる
乗せた覚えのないやつが
隣で言うんだ
この春は
何か欠けているな
そうかな
この一年いろいろあったけど
そうかな
脳ミソの神経か血管でも欠けたか
ふーっとため息ついて
また部屋に戻っている
春は そうだ いつも
わけのわからぬ問いが
ちらほら降ってくる
腕を組み
首をかしげ
この部屋の中に
同じように首をかしげてるやつが
少なくとも二、三人はいる
 
(1997年3月31日)
 
 
  三寒四温
 
ふるえながら部屋で
キーボードを叩いていた
ディスプレイにやられたらしい
目汁
鼻汁を笑えぬ
寒さかな
で翌朝は
水の冷たさが憎たらしくない
昼は車の中で汗ばんで
暖かいのやら寒いのやら
温かいのやら冷たいのやら
夕方 宙ぶらりん
俺みたい どっちつかずの
ぼんやりしている瞼よ開け
顔から早く
飛びだせ目玉
 
(1997年3月6日)
(2011年2月28日、若干修正)
 
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旧作ばかり。再投稿があるかもしれません。
当地では、暖かくなった。暖房を入れなくなって何日経つだろう。
また寒い日もあるのだろう。
冬から春への不安定な気候。心はずうっと不安定なままだが・・・