書けないときは書けないものです
・・・古いものを少し手直しして・・・
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  はなむけ
 
荒れた庭を歩いてみる
ボキボキと音しきり
折ってやがる
背骨も足も
 
これから
吊るされた殉教者が猥談するような
調和も作意もないところから
始めなければならない
残された一生の間に
何が言いたかったのか
吹きっさらしの荒野
動かないミイラ
から骨に
何の報酬もないと
足跡も墓標も残らないと
 
黙ってしまえば
まだよくわからないと一言
投げてしまえば
捨て身になって
この春に冷たく
震えることもなかったものを
 
(1996年12月17日)
(2011年04月20日、一部修正)
 
 
  春に綻びる私
 
水車があって広いパーキングがあって
その隣は更に広い芝生・野原になっていて
子供が遊んだりしている
子馬だろうか遠くの方で
草でも食べているのだろうか
気温が丁度いい
一年中これくらいだといいのに
と無精な私は考える
あっという間だ 茹(う)だるような暑さ
あっという間だ 凍るような寒さ
春と秋はその間の
快楽の期待をしばしば裏切る
不安定な移行期に過ぎない
季節を体感温度というより
快楽原則でしか考えていない
 
年々乗るのが億劫(おっくう)になるオートバイに
最低月二回は百キロ以上の距離を乗って
バッテリー上がりを防ぐ
コーナーでふらついて
ステップをこすりそうになっても
オートバイを手放すわけでもなく乗って
 
子馬を見た 小鳥を見た
平地では既に散った
満開の桃色の花をちらりと見て走った
ケキョやホットットギスは聞けるだろうか
 
実際はバッテリーだけが
オートバイに乗る理由ではないと
わかっていながら
破れそうな脆(もろ)さを抱えて
この春も綻(ほころ)びてゆく
 
(2001年04月20日)
(2011年04月20日、一部修正)
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当時、熊本にいて、よく阿蘇に行ったものです。
オートバイは50歳の頃だったか、処分しました。