一部旧作を借りています。
-------------------------------------
 
粘土細工
 
 
反応がない
貝になりたいのか
でも貝のようで貝ではない
無遠慮な発言だけは続けている
 
人の気持ちが分からなくなっているらしい
 
批判する者を悪魔に見立てて
「何を言われても安らかです。聖霊が守っているから」
くらいのことは言いかねない
神がかりの人間離れの
宗教人の怖さの典型を見る
 
受難に耐えんとする信仰の下で
見逃されたものが
黴(かび)のように影を好み
知らぬ間に蔓延(はびこ)ってゆく
それゆえ暴かれると
あるいは密かに垣間見られたときでさえ
ぞっとするほど陰惨な風景を見せつける
 
反論もしなければ
内省もしないところに
深まるものなど何もない
 
やっていることは傍若無人の極みであるのに
イエスマンに対してだけ快く
バランスのとれた穏やかな人を演じ続けている
 
言論の反応と違って
為したことが暴力であるから
それを改めず気にもせず
継続していることも暴力である
 
傍らに人を発狂させながら
一生暴力のままなのだろうか
それで聖なる御方について語れるつもりなのだろうか
非暴力の生涯を貫いた御方の
しもべをずっと気取るつもりだろうか
 
気づきすぎる不幸もあるが
まるで無機質の石灰のように
気づくことを捨てた不幸を見ている
 
信仰者の怖さの典型を見る
動じないことと固執することは違うのに
「岩」の名を持つ聖人の真似をして
石灰が粘土細工を身に着けて
人の信仰を
人の血と涙を育てるつもりでいるようだ
 
(2011年06月23日)