錆
 
 
忘却したい歴史があるのだろう。
忘却したい過去があるのだろう。
 
傷み続けるよりは・・
 
歴史は記録と記憶の
記憶だ。
 
記憶の中に生きている。
記憶がなければ知性はないから。
 
記憶は海であったり湖であったり
沼であったり澱であったりするが
 
ついに空を望むことはないかもしれぬ。
 
癒そうとしたり病み疲れたり
年月を経て晒されて
 
錆の色と剥離を
糊塗すれば嘘になり
 
偽善になり
語れば慇懃であったとしても
偽善は悪より悪であり
慇懃無礼は無礼より無礼である。
 
此処は幸せの国ではない。
それは誰でも知っていて
かといって逃げることもできず
逃げる場所もなく
幸せの国など何処にもなく
 
拙く此処を掘り返し
石ころでも
擦り減るほどに磨くしかない。
底なしの記憶に
ときおり濡れて
血と水を振りながら
 
空になれない人
見られることもなく一条の
一瞬の光となって消えてゆくまで
軋み続けるしかないのだ。
 
 
(2013年08月27日)