フィクションです。
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   神様の生命保険
 
 
彼はカインでもユダでもなかった。
譬えるなら、彼はカヤパであった。
 
真実ではなく虚偽と隠蔽によって
言論ではなく強制力によって
自分が信仰と呼ぶ価値基準の安泰と体面を守ろうとする彼にとって
誠実を装って尊敬を得ることが何よりも大事であった。
 
神様の生命保険にかかっていると自ら言って
悦に入っていた彼は彼の望むところへ行くことになる。
 
そこは一見清楚な教会であり彼は礼拝堂で説教をすることになる。
 
そこには信徒たちが集い、彼らは
彼の説教が終わると「素晴らしいお話でした」「感動しました」と褒め、
彼が「どこが良かったですか」と問うと「すべてです」と答えた。
彼は褒められることをこよなく好んでいたからである。
信徒たちは彼の視界から外れると直ぐに死人の顔になった。
 
彼の横を通る一人の背教者は、
彼が墓場で墓石相手に独り言をしているのを見て
御使いに尋ねた。
「私はいったいどんな地獄に行けばよろしいので・・?」
 
 
世にあって彼の傲慢は近づく者にとって病識のない疫病であり、
彼の絶望だけが近づく者の希望となり得たが、
彼は偽りを愛したので永遠の偽りに住むのである。
 
 
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天国をイメージすることは不可能と言ってよいくらい困難ですが、
地獄については色々様々に想像だけは可能のようです。
 
(2013年10月21日、同日一部修正)
(2013年10月22日、一部修正)
(2013年10月30日、加筆)
 
 
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