以下は、1997年6月~7月に
日干しになりかけた雛を拾って
小雀になるころまで家の中で飼っていたという話で
4つの記事に分けて書いてみます。まず・・(1)
 
 
  食って寝ろ
 
ただ生きてるだけ
食って寝るだけの
生活とは言えない日々
陽射しの強い日
玄関の前
落ちていた
見上げても巣らしきものはないのだが
何の雛(ひな)か知らない
羽も毛も生えそろっていないが
黒っぽい カラス??
死んで日干しになってるかと思ったら
腹が動いている
赤肌さらして息絶え絶えだ
拾って部屋へ
困ったな 小鳥など飼ったことない
取りあえず冷やそうと
濡れたチリ紙で包んだ
いずれ死んでしまうだろうが
何か食べさせてみよう
缶詰・ソーセージ・ご飯など
ある物を私が噛んで細かくして
水と蜂蜜を混ぜて
自分では食べることができない
咽の奥まで突っ込んでやる
少しは食べる
この日 私 缶コーヒーだけ
翌日カナリアなど小鳥用の
黄な粉みたいな餌を買ってきて
こねてダンゴにして与える
かなり食べる
腹が減るとチーチー鳴くようになった
足が不自由だ 折ったか
よく転けるがジタバタ歩く
二日経ち三日経ち
目が開いた
小さいダンゴなら
平たく削った割り箸で挟んで近付けると
自分で口を大きく開けて
首を伸ばして食い付いてくる
ところ構わず糞をする
小さい黒い眼でこちらを見ている
ただ生きてろ
生きれるだけ生きてみろ
食って寝るだけの明け暮れでいい
 
 
  拾った雛
 
たとえ私がひっそり死んで
横たわっていたとしても
腐乱死体のまわりを
お前は飛び跳ねていることだろう
羽毛も生えそろってきて
鳴き声も大きくなって
部屋狭しと飛んでまわるお前には
閉じ込められていることは不満だろう
でも私が死んだら
いくら鳴いても餌を与える者はいない
嘴に黄色い色を残すお前
まだ自分で食べることができない
今私が死んだらお前も死ぬ
それに飛ぶというより滑空に近く
しばしば着地に失敗するお前を
今外に出せば
また日干しになって餓死するか猫のえじきだ
私は飛べないから
早くしっかり飛べるようになっておくれ
お前が死ぬのは見たくないし
餌ぐらいは買ってやれるが
自活とはいえない私の家を去るために
お前は自活して欲しい
早く自分で餌を探し
ついばむようになってくれ
お前はたぶん野鳥だから
鳥カゴは買わない
だから部屋中の糞の始末をしてまわる
私は今
忘れ去られるためにお前といる
 
 
  チーと名付けた雛
 
もうチーという鳴き声でもない
もう雛とも呼べないかな
カラスじゃなかった
雀か
それにしては全体に薄汚い
羽毛がまだ完全には生えそろっていないのか
外へ出してお別れしようかと思うたび
猫にやられるお前を見てしまう
居間は鳥小屋と化してしまった
 
チー
お前がいなくなると寂しくなるだろう
お前がいるとうんざりする
元気になったな
どうしてそんなに指に噛みつくんだ
 
 
・・(2)(3)(4)に続く・・