「詩人の集い」トーナメント用に再録します
・・トーナメント用の新作書けないのか、
旧作しかないのか・・かかか・・自責しつつ・・
 
 
  覚えてしまった
 
 
空腹を覚える前に
食べることを覚えてしまった
夜の澱粉質の中を
重く泳いでいる
目指す島は
秘密の酵母に託されていて
見つからない
放蕩の鍵
泥酔の臓腑どもは
消化しきれず
騒いでいる細菌どもが
恐れている荒野は
無機質の誕生の前に
渇くことを覚えてしまった
 
 
(1996年11月12日)
昔も今も
ズルズル暗く引きずる書き癖が続いています。
 
 
 
  ガラスのコップ
 
 
片手に弁当を持ち
もう片手に
三本の指に挟んで
冷えた缶ジュースと
ガラスのコップを運ぶ
 
台所から居間への
わずか数メートルの間にも
指の力のバランス
失えば
床に落ちてしまうことが
この世の終わりであるかのように
歩む足取り以上に
神経の集中を
絶やさぬようにする
三本の
指の先
 
ダイヤには
ダイヤの輝き
いつか見た
ショーケースの中
魅せられた
目と目の知らぬ顔
 
ガラスには
ガラスの光
もろく
割れやすく
捨てられやすい
汚れやすく
くもりやすい
傷つきやすく
傷つけやすい
 
いつだったか
散らばる破片の中にいて
細い傷口を開いた
さらに細かい破片の
さらに小さい光
赤くうずいていた
 
熱のまわりで見ていた
割れもせず垂れもせず
加熱してすばやく
引き伸ばしたり曲げたり
回転と屈曲
ガラスの塊が鳥になっていく
熱に耐えた
汚れた作業服の腕とは裏腹な
繊細な手の動きに
鳥が形を変えながら
空を目指していた
 
昔ギヤマンとさえ呼ばれた
ガラスのコップ
手に握り冷たいものを入れて
水滴で冷たく濡れてくる
落とさないように
こぼさないように
目と唇を寄せていく
 
汚れと傷に曇ったまま
何を見ている
空を目指せなかった
ガラスの目よ
うち捨てようと思えば
できただろうか
 
 
(1997年1月9日)
途中でガラス細工の話、入ります・・無責任・・
「ギヤマン」には、ガラスという意味と、
ダイヤモンドという意味もあったそうです。