熱発
 
 
誰もいない夜一人
シーンと耳鳴りに包まれて
明かりをつけたままの部屋を突き抜けて
きっと細胞質だろう 果てしない
 
鎖のように並んで
核酸だろうか次から次に
付いたり離れたりしながら
底知れぬ闇へ落ちてゆく
 
発熱か 汗ばんで
心臓の鼓動は聞こえなくなり
あがくように昨日を吐き出しながら
体は動かない 棺のように
 
手足は引力に戦犯の辱めを受けながら
眼は暗点に縮小し
顔は仮面に潰されて
体は意志よりも反射で明日を患う空間だ
 
世界の信仰は殺傷されて目を覚まし
世界の心は火の霧に蒸され
世界の魂は坩堝に煮られ
世界の預言は鍋物を愛している
 
 
(2015年10月29日、同日加筆)
漢字復習:
熱発(ねっぱつ)≒発熱、
棺(ひつぎ、かん)、
辱め(はずかしめ)、
坩堝(るつぼ、かんか)