旧作で申し訳ないですが・・
 
 
   並木道
 
 並木の桜が咲いた
花鳥風月不感症の
結膜炎の鱗(うろこ)の眼には
紙切れのように咲いて
紙切れのように褪(あ)せて
紙切れのように散るのだ
桜は散って命を残す
紙切れは命を持たない
役に立たなくなった紙切れ
使い捨てたティッシュ・ちり紙
 人に見られたくないメモ?
リサイクルに回らない紙は
捨てられ焼かれる
今日も無数の紙切れが捨てられてゆく
不可抗力・やむを得ないと弁明され
犠牲にされる命のように果てしなく
紙切れは捨てられ続ける
 
並木の桜が散った
 
 
   前へ進め
 
嫌いだと言ってしまえば
自分をいちばん嫌っている自分
に出会うことになるだろう
気持ち悪いと言ってしまえば
成長していくものたちの間にいて
自分の気持ち悪さを
嫌というほど思い知るだろう
大したことはないと軽んじるなら
 いつのまにか派手な花々の
妙に重々しく厳粛な列に並んでいて
膨張し痙攣し硬直したまま
突っ立っているだけの
蚯蚓(ミミズ)の化け物になって
訝(いぶか)しげな視線を
吐物のように浴びせられるだろう
 
嫌というほど
悔いに悔いても今さら
恐れても遅いのが結果というものだ
それでもまだ捨てきれない気持ちなら
身を低くして
消え入りそうな低みに礎(いしずえ)を持ち
あらゆる視線と無視を受け入れ
一歩退いたのち
自らをも暴(あば)きながら
悔いて恐れず前へ進め
 
 
   暖冬
 
問わず語らず疑わず
安らかな感謝と賛美に
凝り固まろうと
もがいている
悟りの微笑よ
起きていることが
目覚めとは限らないのに
眠りを
眠らせるのか
暖かくなった冬が過ぎて
居眠りが大好きなこの季節に
似つかわしくない一枚の枯葉に
似つかわしく散った一枚の花びらに問う
 いつどこでどのように
 なにゆえ
舞い落ちたと思っている
 
 
   懲りない奴
 
例えば人里離れた急峻な山の斜面に
散りながら咲く一本の桜木のように
咲くことを愛でる季節には
散り続けるものを探し
営み順風に吹かれて生き続ける姿には
下血から骨までの道のりをたずね
旅立ちと別れのときには
今まで本当に出会っていたのかと
恥ずかしいときには
今まで恥じないで済むことがあったかと
問わずにはおれない
風流も風情もわきまえぬ性分に
神の独裁をうっかり与えてみよ
やはりそっくり同じ世界を造るだろう
 
 
(2016年03月30日、旧作4題、同日一部修正)
(2016年04月04日、一部修正)
 
4つ目は乱暴ですが、私という人間が
もし世界を創造する力を得たら
どんな世界を作るだろうと考えると
もっとよい世界を、もっとよい世界を、不幸のない世界を、
と考えているうちに
結局、何の面白味もない世界にしかならないだろう
と思う・・のでした・・。