神の義
 
 
追い詰められて、できることも尽きたと判断したら、砕かれた魂は人間として、生きること、去ること、死ぬこと、を含めて、神のとりなしを祈ります。それが神を頼みとすることです。自分にはできないが、神にはできることの義を信じて祈ります。その中には、自分が裁かれることをも含まれます。それが全知全能の神を恐れるということです。
 
それらを合わせて、生きることも死ぬことも神に任せる時と所があり、その成就を祈ることが敬虔であります。何故なら、そのとき、個人は、神の前に、砕かれた魂の民だからです。
 
自分は救われると信じてよいのですが、敬虔なる立場からは、救いの中に、自分が召されること、すなわち、死ぬことをも含まれるのです。いつも、自分に都合のよいようにしてくれる神を信じるのは、神を恐れぬ自分信仰です。
 
永遠の命とは、永遠に楽しく生きることだとは思わないほうが良いと思います。永遠に生きることを人間は想像できないからです。むしろ、例えば、一瞬の永遠、ということのほうが人間にはインパクトになりうるでしょう。
 
神が知っている真実と、人が知るべき真実とは違います。神についての真実は、人についての真実とは違います。単なる大小比較ではなく、立場の違いで、絶対と相対の違いに基づく違い、つまり、埋めようのない違いです。克服するべき違いではなく、弁えるべき違いです。
 
私たちの知ることも知るべきことも、神の全知に比べれば、塵のようなものです。その塵を大事にするのであって、神の真理や真実を知りうると思い、知ったと思い込むことは、信仰に反することです。
 
このように、私たちは被造物であり、被造物は創造主に対して弁えるべき節操があります。創造主は、被造物を壊すのに、いちいち被造物が納得するような説明をするわけではないのです。塵のごとき身の程を弁える信仰者は、同時に、感性と理性を与えられています。温もりと潤いを与えられています。息と涙を与えられています。それらがあるあいだ、正直な告白に応えて、わたしたちの信仰は、神の力によって人間という命となり生かされるのでしょう。
 
私たちが、信仰者の端くれであっても、この地上に仕えるのではなく、神に仕えるのだから、たとえ、欲に縛られ、俗に縛られていても、私たちは、日々祈り、神に、自らの思いの有様を正直に告白することになります。そして、罪を認めるなら赦しを乞うことになり、また苦しく悲しいなら癒しを乞い願うことになります。
 
私たちは、そのようにして、人間のスケールでは決して計り知れない全知全能の神と付き合うことになるのです。信仰は、神との付き合いであり、団体の親分との付き合いとは違います。人は他の人の総ての息と涙を知り得ません。その不全において、私たちは救いを必要とし、神は救いを与えようとするゆえの双方向が信仰です。導きを受け、感じて考えて、判断をし、それを神に捧げるのが、信仰者の人生です。それ以上でもそれ以下でもありません。
 
死後のことや、永遠のこと、絶対のこと、完全なる真実と善と美は、人間には手に負えません。人間の真善美は、人間の解放において与えられる自由ですが、そこには、被造物の一生懸命な生き方があり、学習と成長があります。完全や絶対とは違う判断の世界で、人間は、その最大値をもって神に仕えるのであります。
 
神の義とは、人が守るべき律法ではなく、人が受けるべき節操であり、人が人間らしく生きるための神の慈愛によって与えられるものであり、キリストの生き方において示されたところの慈愛が人をほだす導きを通して、罪深き人が時々の神の試みに答えるところの生き方の神に対する誠実なのです。
 
人は神を証しできなくて、罪を犯していても、神は人を既に証ししており、既に見ており、既に聞いており、既に知っており、既に導いている。人は人間であり、知己が多いか少ないかに関わらず、この地上では人間同士の関係において、信仰の種は芽吹くことになるからです。祈りは、多く告白から、罪人の自覚から始まることになります。告白より讃美が勝っているのは、自覚が乏しい証拠です。
 
主よ、わが罪をお赦しください。私は自分を養えません。私は自分を導けません。私は自分を赦すことさえできません。わが生を養いたまえ。わが時を導きたまえ。わが魂に息吹を与え、わが魂を潤したまえ、されば、わが命をして懸命に努めさせてください。偽りを遠ざけ、わが命に相応しい真実を与えたまえ。われを戒めたまえ。懲らしめに渡されることのないように悪から守りたまえ。わが齢の限りあるを憐れみ顧みたまえ。わが罪を赦したまえ。主イエスキリストの御名によって祈ります。アーメン。
 
 
(2017年10月24日、同日一部修正)
下書きの時点では、ある程度、書けたつもりだったけど、今見ると、あんまりぱっとしないので、また稿を改めて書くことがあるかもしれません。
 
顧みる(かえりみる)
 
 
 
にほんブログ村 ポエムブログ 暗い詩へ(文字をクリック)]
 にほんブログ村 哲学・思想ブログ 思想へ(文字をクリック)]
にほんブログ村 哲学・思想ブログ キリスト教へ(文字をクリック)]