ウソの国-詩と宗教:st5402jp

キリスト信仰、カルト批判、詩のようなもの、思想・理念、数学・図形、などを書いています。

2010年10月


  問いの小道
 
ある日
問いは
どこかの小道を
歩いていました
きれいな花や
しぼんでゆく花びらや
ささえている茎や
はぐくんでいる土にも
ときめいたけれど
切り取ったり根こそぎ
摘んでしまっては
わるいからと
めぼしいものを見つけては
クレヨンでスケッチ
クエスチョンでマーク
したりしたり
していました
家に持って帰って
スケッチを並べて
あいだをひらひら
舞う蝶には
なれないから
いつかスケッチを見ながら
スケッチブックをふくらませて
なつかしい小道を
目の前にありありと
うかべることができたら
そのときは生きてもいー
死でもいーと
ため息をつきました
とぼしいビジョンをかかえて
ため息はまた
すこしやせた問いになって
どこかの小道を
歩いていくのでした
問いは問いを生み
どこまでも問いのまま
いつか問いのまま
問われる先に
名前のないお墓が
明るく陽を浴びて
小道の花々に
隠されていくことを
願うばかりでした
おこってくれー
かくれないでくれー
 
(1997年4月1日)
 
 
 
 
 


  夢の肌
 
眠れない夜は
ひとつの世界
重なりあう思いに
乱れた欲望に
解き放たれようと
夢の肌を探る
天井と床の間で
さまよう視線が繰り返す
明滅のうちに
苦しみながら呼んでいる
ひとつの旅
光も闇も
夢と眠りの跡を
ゆるやかに流れ
消えて
忘れた言葉のような
弱々しい悔いと気分を残して
新しさにまだ気づかない
朝を迎える
夢の肌のあせるころ
 
(96年、またはそれ以前)
 
 
  夢の予告
 
目の前に丸い太い
ぶ厚い重い輪が
ぎらぎら毒々しく光る
これは経験から明らかに
(夢の中で経験が生きる?)
持病の偏頭痛の前兆だ
というところで目が覚めた
視野の中心から広がる
いびつな三角形の閃輝暗点
今度は紛れもなく経験から
偏頭痛の前兆だ
急いで頭痛薬を飲む
起きてしばらくすると
頭の左半分に軽い頭重感
痛みというほどではない
薬は効いている
夢が予告した?
網膜と神経に生じた異変を
浅い眠りの
夢の乱れた思考が
取り込んで表現したのか
肉体に対する警告
とても稀な
夢と現実の接触
 
(2006年03月29日)
 
 
 
 
 


  生死の拠りどころ
 
生きることが
死ぬことよりも怖くなるときでも
そうではないときでも
いちばん怖いものは
死ではない だから
いちばん大切なものは
生ではない
生よりも大切なことがある
だからといって それは
死でもない
それは生きることの
拠(よ)りどころとしているもの
と それに関わるすべてのもの
例えば信仰について
例えば詩のようなものを
書いている時間は
生よりも大切だ だから
その時間に事切れても
たとえ未完のまま息絶えても
その死ではなく
その生でもなく
その結実でもなく
その時間は
永らえるためにでも
けっして惜しんではならない
生よりも大切な命の時間だ
 
(2006年03月08日)
 
 
  静けさ
 
心静かに
静かな夜に眠れない
心静かに・・・
それは
暇人にも追い詰められるような
瑣事や心配事は
いろいろあるのだけれど
眠れない夜に
不安がいっぱい周りで騒いでいるけれど
負えない荷物に潰れてしまいそうなのに
重さは別のところにあって
ぽつんと独りの
しかも眠れない夜にあるのだ
もう将来と呼べるものもないのに
自らの死と
肉親の死に狼狽すること
しか待ってはいないのに
やけっぱちでも投げやりでもなく
あきらめでも達観でもなく
とても無さそうな時と所に
眠れない夜
苛立ちとは別に
経過してゆくのだ
 
(2007年06月01日)
 


  口をあける
 
死なずにいることしかできませんでした
夜ひとり口を空ける
呆けて待つ姿勢
それではいけないか
それではいけないな
遠くで犬が吠える
狼の遠吠えに聞こえる
過去を呼んでいるように聞こえる
次々に犬が吠える
今を憎んでいるように聞こえる
また遠くで吠える
未来に向かって叫ぶ牙のようだ
遠吠えしてみたい
吠えてみたい
叫びたい
夜ひとり口を開ける
声が出ない
入る
聞き取る間もない勢い
犬歯を折る
口を引き裂く
喉を突き破る
頸椎を砕く
延髄を貫く
罪か罰か知る由もない
過去を呼べない速さで夜の風穴
涙腺を干す
 
(1997年9月13日)
 
 
  正気への警告
 
夜見る夢も昼見る夢も
ただれた眼で見ている
おぼろげな幻想に過ぎないが
よい夢も悪い夢もあるのに
目覚めてみれば
現実も幻想に満ちている
夢とは違って
幻滅という必然が待っているから
よい幻想はほとんどない
さらなる幻想に逃げようとすれば
死は幻想を保証しないのだから
正気を失うしかない
 
耐え難い重荷が限度を超えたとき
正気を失うということが
肉体を守るための
防衛反応に思えてならないことがある
 
例えば鏡に映る顔が
生き生きした何ものもなくて
気持ちと全然一致していないとき
心神は残る力を振り絞って
限界に注意を喚起し警告を発している
鬱(うつ)による意欲低下は
これ以上の無理は無理と
心身を休ませるため
さらに感情の麻痺や鈍麻は
重さを感じなくて済むように?
 
それがわずかに残された
正気の辺縁をめぐる
ただれた眼の日常となって久しい
 
(2005年05月09日)
 
 
 
 
 


  一つの一日
 
ありふれて
始まる
誰のためでもない
鳴く小鳥
 
聞かれている
聞かれていない
場所を告げない
響く
蝉の声
 
光り届かない
無数か
燃え尽きる
流星の欠片(かけら)
 
一日である
他の日ではあり得ない
迎えた
送る
 
 
  ゴミ捨て
 
明日決められた日
朝は忘れる
夕方忘れた
深夜
ゴミ袋を持つ
数メートル
歩く

見えてくる
決められた場所
立て札・曜日
確認
ゴミを捨てる
ほっとする
善くも悪しくも
みんな捨てた
中身
みんな忘れた
 
 
  線香花火
 
線香花火
雫(しずく)
火花
咲かせる
滴る
落ちる
ただ
一度だけ
暗くなる
激しさ
 
 
  狭い展望台
 
車をあとにする
わずかの道のり
登る
ゆっくり
狭い展望台
岩山
景色
すぐに飽きる
勝てない
成れない
落書きを見る
○○老人会
平成○年
少し深く
息をしている
 
 
(4つとも1997年8月8日)
 
 
 
 
 

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