ウソの国-詩と宗教:st5402jp

キリスト信仰、カルト批判、詩のようなもの、思想・理念、数学・図形、などを書いています。

2010年11月


  偽りの時間
 
巷に時間を売る商売の流行るころ
深緑の儒学の森を歩いて
樹木のまばらな所を見つけて
根っこに腰掛けた
地面が枯れ葉に覆われているのを
おかしいとも思わないで
拾った汚い画集を
逆さと気づかないまま
ゆっくり開く動作をしながら
吸えるだけ空気を吸った
そして死なずにいてくれた人たちのために
用意することのできなかったものを
死んでしまった人たちのために
背負うことのできなかったものを
偽りの指で数え始めて
呟く ごめんよ
まだ何気ない一言で
壊れてゆく人がいる
戻れない洞窟もたくさん残っている
ボンベが閉められたらしい
この森についていえば作り物かどうかを
誰も知らずに来ている
巷の時間を買えなかったんだ
 
(1997年4月23日)
 
 
  退行
 
行き詰まったときには
壊してしまうこともあるが
退行することも多い
子供になる
無精髭を生やした子供
おぞましや
そのとき何処にいる
母の胎内か
揺りかごの中か
宇宙へ連なる
浮遊か
意外と墓場にいたりもする
杖をついて
 
(1997年4月19日)
 
 
  癒しの旅
 
注ぐものもなく取りあえず
のように向けられる眼差しは
何も見てはいない
瞳ではなく腹に落ちて
目まいと嘔吐を催すだけだ
約束処方の湿布のように
肩にそっと置かれる手は
一滴の血も流してはいない
背負いたくもない借り物の
荷物になってぶら下がるだけだ
どこかで聞いたような
台詞のまま動く唇は
何も語ってはいない
逃げ際に配られたビラに
口を塞がれるだけだ
覚えがある
この目から手から口から出ていって
お返しに戻ってきたものだ
吐いて払って裂いて
その挙げ句
あきらめよう
と言ってしまった
ある日を
葬り去るために
恐れるな
と言える日は
恐れに身を震わせながら
受けることも捧げることも
拒みながら待ち望みながら
誰のためにも路程を残さない旅だ
 
(1997年4月19日)
 
 
 
 
 


  弱虫で在ること
 
弱虫が捨てられたビルの根元から
這い出してきて 舐(な)め合っている
渾身(こんしん)の力で
ぶつかり暴れ叫びたいのだが
残っているのは辛うじて這う力と
潰れた顔だけだから 舐め合っている
泣くんじゃない
泣け好きなだけ
誰も頼るな自ら立ち上がれ
独りは良くない皆で寄り添え
教えられ振り回され目を回され
わかっては いない
わかってはくれない誰も
それだけ分かりやすくて
 
ときには
僅かな地熱が灼熱の炉において
身の温もりを捨てるように
割れた薄氷が零下の地において
身の冷たさを捨てるように
拾うことも拾われることもない場を
住処(すみか)として微動だにせず
微動だに出来ないことが
群れのあるいは個の
色からも熱からも解き放たれた
悦び・実り・誇りの一つの異型として
問えば誰の口からも虚無と呼ばれて
在ること
それだけ分かりにくくて
 
(2001年02月25日)
 
 
  うねり
 
暗闇の底に眠る魂が
肉体も浮かばれないように
青いだけの海はない
甲板には多くの人々が立って
闇を蹴り続けている
大きなうねりが迫ってくるのに
厚い皮だけで守ろうとするとき
すでに唾液を引いて落ちた顎と
肉の落ちた疑いの目と目が
闇よりも暗く睨(にら)み合っている
青いだけの海も空も
動かないと約束された山も土地もない
大陸の崖っ縁(ぷち)に
辛うじて水面から顔を出している
今にも崩れ落ちそうな
沈みかけた空母の甲板に
大陸の沖からの波は
温められ冷やされながら
いかなる温度とも
いかなる高度とも告げず
襲う構えを日毎(ひごと)変えながら
今日も寄せては返すのである
 
(2001年02月25日)
 
 
  個と種
 
違う遺伝子を持ち
違う学習を経た
個はあくまで個であるから
理解し合えることはないだろう
同じ遺伝子と学習経過を
一部に持っている
種はあくまで種であるから
他の種との協力よりは親密に
協力し合うことはあり得るだろう
誤解を許容した上での話で
他の種との共存を肯定した上での話で
はるかにヒトより永い淘汰の歴史を持ち
一途(いちず)に子孫を残すことだけのために
強化された遺伝子を持っている他の種に
無謀な戦いを挑もうとしなければの話だが
 
(2001年03月01日)
 
 
 
 
 


  貯え
 
灯油缶を持ち上げるときには
特に二缶持ち上げるときには
缶が真横に来るように
二つの缶の間に立って
足を少し前後に開いて
膝を手が取っ手に届くまで曲げて
取っ手をつかみ膝を伸ばし
垂直に持ち上げる
間違っても体の前方で
力任せに持ち上げるのだけは止めておく
そう決めたのは
治らない腰痛に気づいてからだった
今では洗面所で前屈(かが)みになって
髪を洗っているだけでも痛い
灯油缶を持って階段を上るときには
膝を大げさなくらい高く上げる
そう決めたのは
体重+灯油の重さの感覚を誤って
上げたつもりの膝が充分に上がってなくて
いい加減に踏み出して爪先を引っかけて
階段で躓(つまず)いてからだった
若いつもりの無理と懶(ものぐさ)が積もって
病気が振り込まれ
健康が解約されてゆく
満期になってからでは遅いのだが
今でもそれに近いくらい遅いのだ
神経や筋肉だけでなく
その中枢が
 
(2000年03月11日)
 
 
  夢の日
 
夢の日を
遠く見つめて
狭い展望台の
岩場に立つ
私はこんなにも軽い
浮雲
浮草
シャボン玉
ああ虹色よ
打ち上げられた
貝の殻
 
(1997年12月1日)
 
 
  夢の花
 
好きな花は
ヒヤシンス
というより
好きな花の名は
風信子(ヒヤシンス)
風(かぜ)信子(のぶこ)さんではない
好きな名は
むしろ「ふうしんし」「ふうしんす」
と呼びたいくらい
風媒花でもないのに
風信子
子供でもないのに
風信子
ヒヤシンスに当てられた漢字
それは叶(かな)わぬ夢
風の子になって
風の便りを伝えたい
風に乗って
信じられる通信の
飾らない素子になりたい
 
(2002年02月28日)
 
 
 
 
 


  世界観妄想
 
プラスとマイナス
陽と陰
NとS
光と闇
世界の本質は
「対」をなしているのか
 
しかし次に
滑らかな円が
無限個の三角形であり
錐体は柱体の三分の一であり
さらに「三位一体」
世界の本質は「三」で
トリニティ・トライアングルか
 
しかしここで
黄金分割である
しかも正五角形に表れている
三角形を含んでいる
世界はペンタゴン界!?
 
さらにさらに
オイラーの公式と等式
こうなると狂おしくなってきて
しまいに世界は虚数だなどと
ルナティクに叫びかねない
 
要は数学的才能の乏しさを
絶叫しているに過ぎないのだが
 
人の思考にも
神の意思は行き届き
行き渡り
様々な英知と不思議を
与えている
 
しかし陰陽も
「光と闇」も
「三位一体」も
(黄金律というのもあるが・・・)
「この世は虚」も
宗教的な響きを持ってきて・・・
乏しさと貧しさと
絶叫と奇声と狂気には
神の如何なる意思が
隠され?顕れている?
 
いつか虚しい思いの内に外に
乏しく満たされており
貧しく富んでおり
絶叫は賛美し
奇声は祈り
狂気は信仰する
ゆえに五は二であり
体と心と魂は
賜る霊とともに在り
ゆえに三は一であり
虚は否めず分からず
慕わしくとも逃れたくとも
生は死へ昇天し
死は生へ昇天し
ゆえに二は一であり
一は無限であり永遠であり
虚は聖へと昇天し続ける
 
(2008年07月15日)
 


  何をやっている
 
私は何をやっているのだろう
便利というわけでもなく
ただ素朴に面白くて
数字と記号で遊んでいるつもりが
逆に数字と記号に頭を痛めて
便利というわけでもないのに
もてあそばれ振り回されているようだ
 
じっと見つめると数字も記号も文字も
馴染んできたはずの意味を失い
壊れた模様に見えてくる
 
ああ私は何をやっているのだろう
しんみり素朴に真剣に
祈っているつもりが
毎日同じことばかり祈っている
文言まで殆ど同じではないか
これではお呪(まじな)いではないか
祈りがお呪いに振り回されて・・・?
 
少し違うと感じるのは
祈り求め願うことが
限られてきたということ
 
どんな繰り返しでも
私は数字ではありません
私は記号ではありません
私は文字ではありません
 
数字や記号や文字以上に
肉体は壊れてゆくが
精神は壊れてゆくが
それを包む世界の景色は
こちらの都合などお構いなしに
変わることなく
変化し続けているから・・・
 
(2008年07月11日)
 

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